garamanのマジック研究室

図説・日本の手品

平岩白風氏が日本古来のマジックを分類し解説したものです。初版は昭和45年で、当時既に埋もれかけていた日本古来のマジックを分類して、記録に残したものです。和妻や日本の手品史を研究する人には、この本が大きな力になってきたはずです。解説の合間に見られるちょっとした補足さえ、当時を偲ばせる貴重な情報源になっています。また、解説ばかりでなく、巻末では実に137冊もの古書について一つ一つにコメントを付けながら列挙してあり、この参考文献は、それだけで1つの研究資料と言えるほどの充実ぶりです。そんな日本手品の歴史を語る上で欠かせない一冊が、平成25年7月に新装版として新たに刊行されました。

もし、日本の伝統的な手品文化を知らない方は、ぜひ読んでみて下さい。色々な驚きがあります。例えば「金輪の曲」という、金属の輪を繋いだり外したりしながら、色々な「型」に見立てて魅せる芸がありますが、これを和服の放下師(当時のマジシャン)が、街中で通行人の前で披露している絵が残っています。今風に言えばリンキングリングを演じるストリートマジシャンです。当時そんな文化が確かにあったのです。他にもカップ・アンド・ボールと同じような「品玉」や、エスケープ・イリュージョンとも言える「葛篭(つづら)抜け」など、現代でも行われているようなものが、日本独自の風情で演じられていたのです。

また、明治時代に入ってからは、海外のマジック作品が驚くほど早く取り入れられていたりします。例えば、外国のマジックの歴史を追っていると必ず出てくる「ペッパーの幽霊」という光学原理を利用したマジックなども、すばやく取り入れて日本風にアレンジしてしまっています。

さらには、「胡蝶の舞」など日本にしか存在しない作品で、海外でも絶賛された作品を生み出していたりもします。マジック文化は今よりもずっと発展していたと言えるかもしれません。そんな熱い時代に触れられる一冊です。

河出書房新社

レビュー

なし