garamanのマジック研究室

Oil And Water

赤いカードを油、黒いカードを水に見たてて、各3枚ずつのカードを使用します。油(赤)、水(黒)、油、水、油、水、と交互に裏向きに重ねますが、いつのまにか油、油、油、水、水、水、ときれいに分かれてしまうのです。

上記のように「混ぜ合わせたはずのカードが赤・黒に分かれる」現象を総称して Oil & Water と呼びます。枚数は説明上3枚ずつと書きましたが、3枚である必要はありません。


水と油 (1) Oil and Water (Edward Marlo)

カードマジック事典
p.251

エド・マーローの手順として高木重朗氏によって解説されています。赤・黒4枚ずつを交互に裏向きに重ねたはずのカードが、赤・黒きれいに分かれてしまいます。続けて、今度は表向きのまま赤いカードの間に黒いカードを1枚ずつ挟みこんでいきますが、やはり赤・黒に分かれてしまいます。「水と油だから分離してしまう」わけですが、最後には魔法によって混ぜ合わせてしまいます。

タネに関わるのではっきりとは書けませんが、8-9-10 で分類すると 10 です。(2004.09.26)

水と油 (2) Oil and Water (Dai Vernon)

カードマジック事典
p.253

ダイ・バーノンの手順として高木重朗氏によって解説されています。右手に黒4枚、左手に赤4枚のカードを裏向きに持ち、交互に1枚ずつテーブルに置いていきます。赤・黒・赤・黒・赤・黒・赤・黒、という風に。。。すぐさま取り上げて表向きに裏返すと、赤・赤・赤・赤・黒・黒・黒・黒に分かれています。続けて左手に持った赤のカード4枚を、右手の黒のカード4枚でたたくと、一瞬で赤・黒が交互に混ざり合います。

マーローの手順の後に続けることも可能であると説明されていますが、説明通りに実演すれば初めとは違う手順でアンコールに応えることが出来ます。(ただし、結果的には同じ現象ですから、アンコールされてもいないのに無理に続けて演じる必要は無いでしょう)

8-9-10 で分類すると 8 です。準備不要の名手順だと思います。(2004.09.26)

水と油 (3) Ace to Ten Pazzle (Nick Trost)

カードマジック事典
p.255

ニック・トロストの手順として高木重朗氏によって解説されています。同じスーツ(例えばスペード)のA〜10までのカードを使います。右手にA〜5、左手に6〜10のカードを持ち、左右の手から1枚ずつ交互にテーブルに置いていきます。A・6・2・7・3・8・4・9・5・10、となっているはずですが、表向きにして確認してみるとA・2・3・4・5・6・7・8・9・10、と順番に並んでいます。

「水と油」というイメージから少し外れてしまいますが、原理としては同じ部類に入るものでしょう。(2004.09.26)

水と油 (4) Oil and Queen (Roy Walton)

カードマジック事典
p.255

ロイ・ウォルトンの手順として高木重朗氏によって解説されています。テーブルの上に黒・赤・黒・赤と4枚のカードを置きます。残った4枚のカードを左手に持った状態で確認すると黒・赤・黒・赤となっています。テーブル上のカードには一切触れないまま左手のカードを再確認すると、いつの間にか4枚とも黒いカードになっています。

「と言うことは、まさかテーブル上のカードが4枚とも赤に?」と思っていると最後に想像以上のどんでん返しが待っている。という手順です。(オチはあえて書きません。)

8-9-10 で分類すると 10 です。(2004.09.26)

オイル・アンド・ウォーターの8−9−10
〜Oil & Water〜

松田道弘のマニアック・カードマジック
p.84

松田道弘氏の考案手順です。次のような3段の手順によって構成されています。

第1段 :
赤・黒交互にテーブル上に重ねたカードが赤・黒4枚ずつに分離する。
第2段 :
黒カード4枚を裏向きに扇状に開く。交互になるように赤いカードを差し込むが、やはり分離する。 第3段 :
赤4枚の上に黒4枚を重ねるが、今度は赤黒交互に混ざり合ってしまう。

11 枚の挿絵付で 9 ページにわたって詳細に解説されています。

8-9-10 で分類すると 9 です。(8-9-10 の分類って何?という疑問は、この本を読めば解決します。)(2004.09.26)

パズル・アンド・ウォーター

現代カードマジックのアイディア
p.150

同一現象の繰り返しが観客から見て退屈であるという問題点を考慮した松田道弘氏による改案です。大まかには「分離 - 分散 - 分離」という流れになっています。さらに、観客から見て無駄とも思える数えなおしを極力減らそうとした手順でもあります。

松田氏の改案は 9 ページにわたって詳説されています。が、それだけではなく「バーノンの手順」「アスカニオの手順」の中から、引っ掛かりがちなやりにくさを指摘して、部分的に解決策を提供してくださっています。元の手順を知らない人には無用のものですが、バーノンやアスカニオの手順を習得しようとして、この「やりにくさ」に引っかかって断念した人には、朗報です。

8-9-10 で分類すると 9 です。(2004.09.26)

東京湾の「水と油」

新版ラリー・ジェニングスのカードマジック入門
p.161

加藤英夫氏による改案手順です。数枚のカードを表裏交互に混ぜ合わせますが、裏と表に分かれてしまいます。その後すぐさま交互に混ざり合った状態に戻るという、スピード感のある手順です。

ラリー・ジェニングスは、「水と油」のバリエーションを実に97種類も習得したそうですが、そのラリーでさえ、加藤氏にこの手順を見せられたときには相当の驚きがあったそうです。。。(2004.09.26)

ミニマム・オイルアンドウォーター

Packetician
p.24

カードマジック専門のサイトCard Loves youを運営なさっていたiinoさんのオリジナル・トリックです。フェイスの色(赤・黒)ではなく、バックの色(赤・青)を使って混合・分離を繰り返します。しかも「ミニマム〜」のタイトルどおり、赤・青2枚ずつの計4枚で行うオイル・アンド・ウォーターです。

ファンに広げて混合の状態を確認し、パケットを揃えます。直後にもう一度ファンに広げただけで分離の状態になっているという、実にスピーディーな現象が何度も繰り返されます。しかも、はじめから終わりまで難しい技法は一切ありません。見ている人の驚きも然ることながら、演じていても不思議に思えるほどのインパクトです。手順の最後は目の覚めるような現象で締められていて、全体的にきれいにまとまった好手順です。

ただパケットを開閉しただけで現象が起こるのですから、これ以上効果を判りやすくするのは難しいでしょう。また、これ以上枚数を減らすのも不可能でしょう。さらに、これ以上難易度を落とすのも難しいでしょう。色々な意味で限界に挑戦しているような手順ですが、ことごとくクリアされています。個人的には「Packetician」の中で一番お気に入りのトリックです。(2006.03.04)

ハイパー・オイルアンドウォーター

Packetician
p.38

こちらもCard Loves youのiinoさんによるオリジナル・トリックです。4枚ずつの赤・黒のカードを使ったオイル・アンド・ウォーターです。この手順の一番のポイントは、「全てフェイスアップで行う」という事に尽きます。手順のはじめから終わりまでフェイスが見えた状態のまま混合・分離を繰り返すのですから、そのインパクトは絶大です。「ミニマム〜」と比較すると難易度は上がりますが、それでもさほど難しくはありません。

iinoさんご本人が最も力を注いだ作品だそうですが、その意気込みが文章に表れています。2ページ目にまたがる程の前書きには「オイル・アンド・ウォーター」への洞察の深さが覗えます。他の作品もそうですが、iinoさんの解説文は親しみやすくて読みやすくて親切です。8ページに亘る手順の解説には20枚以上の写真を駆使した適切なアドバイスが満載です。

最後に手順全体の注意事項や演出のバリエーション、更にはデックからのセットアップの方法に至るまでiinoさん自身のアイディアが載っています。(2006.03.04)

油と水(1)

奇術入門シリーズ カードマジック
p.91

スチュアート・スミスによる準備の要らない作品です。高木重朗氏による解説ですので、非常に読みやすくすんなりと頭に入ってきます。赤・黒6枚ずつの計12枚を使用します。事前準備もギミック・カードも必要なく、セルフ・ワーキング的な作品となっています。代償として一部不自然に見えなくもない箇所がありますが「マジシャンは気なっても観客にとっては気にならない」というような絶妙なバランス感覚を感じます。赤・黒の枚数を確認するときの数え方が色によって違うので、決定的なキズと感じる方もいるかもしれませんが、おそらくそれはマジシャンの目で見ているからでしょう。ある程度の経験年数のあるアマチュアマジシャンは、こういう部分についこだわってしまい、余計な技法を織り込んでしまいがちです。むしろこのくらいの不自然さを含ませたままでも、それを感じさせないくらいの話術・雰囲気を養いたいところです。

現象の概要はこうです。観客が6枚の黒いカードを持ち、マジシャンは6枚の赤いカードを持ちます。マジシャンが1枚のカードをテーブルに出し、その隣に観客が1枚のカードを並べます。以下お互いが3枚ずつのカードを出すまで横一列に並べていきます。6枚のカードが赤・黒交互に並んだ状態です。今できた一列の下にもう一列同じようにカードを並べていきます。お互いのカードがなくなるまで続けると、6枚のカードが赤・黒交互に並んだ状態が2列できます。その2列のカードを全て表向きにすると、始めの1列が黒一色、2列目は赤一色に分かれています。

そもそもセルフ・ワーキングと言えるほど簡単な作品を、5ページに亘り17枚のイラストを添えて解説していますので、理解に苦しむところはないでしょう。ただ一点、私が所有している第8版にはイラストに間違いがありました。7番目のイラストを見ると、下から2枚目のカードがダイヤの10になっていますが、解説文と照らし合わせるならダイヤの7であるべきです。(2007.06.17)

水と油
〜 More Oil, More Water 〜

パケット・トリック
p.139

"Classic Takler" に発表された、マックス・メイビンの作品です。本人の注釈によると、スチュアート・ジュダの影響を受けたそうです。赤・黒4枚ずつのカードがいくら混ぜ合わせても分離してしまうという現象を4回繰り返します。手順だけ追っていると、ハンドリングに疑問を感じる箇所もありますが、何度か演じてみると、見た目の分かりやすさや説得力を持たせるためだということが分かります。5ページ強の説明で手順自体も長いので、覚えるのは大変ですが、見る人の印象は軽いはずです。

第1段は、テーブルの4枚の黒と手に持った4枚の赤を交互に重ねたにも関わらず、赤と黒が分離します。第2段は、第1段と(見た目に)同じ手順を繰り返しますが「テーブルに置いた4枚が本当に黒なのか?」「手元のカードは本当に全部赤か?」といった疑惑を解消させながら繰り返すような演出で、説得力を持たせています。交互に重ねる時にさえ、1枚ずつ表を見せながら重ねるのです。第3段もまた繰り返しです。但し今度は軽いノリで演じると良いでしょう。第2段でじっくりと見てもらったので、今度は確認の手間を省いて現象をスマートに表現するのが良いと思います。第4弾は、ファンに開いた赤いカードの間に1枚ずつ黒いカードを差し込んでいき、表から見てもらうことでその状態を確認してもらいます。そのままファンを閉じます。それを今度は片手で1枚ずつテーブルに出していきますが、やっぱり赤黒が分離して出てきます。混ぜるときも、分離状態を確認するときも、公明正大な印象を与える事ができます。

多少複雑ではありますが、全体を通して高度な技法は使われていません。(2010.03.07)

Mini Oil and Water

ファット・ブラザーズ 第1巻 日本語字幕版
演技 : Disk1/Title3/Chapter10
解説 : Disk2/Title4/Chapter3

F.F.F.F.コンベンションでのダニー・ダオルティスの実演が収録されています。タイトル通り、赤・黒2枚ずつで行う小さなオイル・アンドウォーターです。

ダニーは、その時の観客の反応に合わせて手順も自由に変えてしまう人なので、いつもこの通りに演じているわけではないと思いますが、映像では4段階の構成で演じられています。

まず赤・黒を1枚ずつ、テーブルに伏せて置きます。手元に残っている2枚も赤・黒が1枚ずつである事を見せます。息を吹きかけると手元のカードは赤2枚に変わり、テーブルのカードを表向きにすると2枚とも黒になっています。

そして第2段。今、手元には2枚の赤いカードを持っています。テーブルには黒いカードが2枚表向きに置かれている状況です。手元の赤いカードとテーブルの黒いカードを1枚ずつ重ねて、テーブルに伏せておきます。残りの2枚を手に取り、こちらも赤・黒1枚ずつであることを見せます。再度息を吹きかけると、また手元の2枚は赤に、テーブルの2枚は黒になっています。

続いて第3弾。今度は混ざっている状態がより分かりやすくなるように、赤いカードを裏向き、黒いカードを表向きに重ねます。テーブル上には下から赤・黒・赤・黒の順で重なり、黒いカードは表向きになっています。まとめて手に取り、ファン状に開くともちろん赤黒は混ざったままですが、一度閉じて息を吹きかければ、やっぱり赤・黒に分かれます。

最後に第4段。赤と黒を1枚ずつテーブルに伏せて置きます。残りの2枚は左手で表向きに持ちますが、このとき、黒いカードの上に赤いカードを重ねるように持ち、赤いカードは観客側に3センチほどずらして重ねます。こうする事で、赤いカードの下にある黒いカードが3センチほど手前にはみ出している状態が見えます。ところが、このはみ出している黒いカードの上で右手を軽く振るだけで、いつの間にか2枚とも赤いカードに変わっています。もちろんテーブルのカードは2枚とも黒になっています。

第4段の鮮やかな変化現象のために、伏線を張っているような構成ですが、その伏線も鮮やかです。一般の方に演じるにはもう少しゆっくり見せたほうが分かりやすいと思います。

また、2枚目のDVDに収録された解説では、第4段目のバリエーションも紹介されていますが、こちらはさらに強烈です。第4段に入る時点でテーブルに赤と黒のカードを【表向き】に置いておきます。左手は表向きの赤の上に表向きの黒を、先ほどと同じように3センチ程ずらして持ちます。つまり4枚すべての表が見えている状態です。テーブルの2枚を右手が通過した瞬間、2枚とも赤いカードになり、同時に左手のカードも2枚とも赤に変化しています。(2013.06.23)

Oil Over Troubled Water

ファット・ブラザーズ 第1巻 日本語字幕版
演技 : Disk1/Title3/Chapter11
解説 : Disk2/Title3/Chapter4

クリスチャン・イングブルムによる凝った手順です。赤裏と青裏が入り交じったデックを取り出す所から始まります。その中から赤裏3枚・青裏3枚を抜き出して、残りはバラバラのまま観客のそばに置いておきます。手元の6枚のカードでオイル・アンド・ウォーターを演じますが、これが非常にクリーンです。右手に持った青裏3枚と左手に持った赤裏3枚を、1枚ずつ交互にテーブルに重ねていきます。取り上げてファンに開くともう赤と青が分かれています。続けてもう一度赤裏と青裏を交互にテーブルに重ねていき、とりあげてファンに開きますが、今度は混ざったまま。。。しかしこの後がすごい。一度ファンを閉じて観客にしっかりとつまんでもらいます。数秒待ったあと、観客がつまんだままの6枚をファンに開くと、やはり分かれています。

観客の手の中でバラバラな状態から赤と青に分かれるという現象はとてもインパクトがあります。ところで、はじめに観客の側に置いたバラバラのデックですが、これもテーブルにスプレッドすると赤と青に分かれています。2つの現象を起こすと全体的な印象がぼやけがちですが、少し時間をおくと分離するという説明のおかげで、全体的に一貫した現象にまとまっています。

2枚目のDVDで、緒川集人氏を相手に全て詳細に解説されています。(2014.04.13)

オイル・アンド・ウォーター

あそびの冒険 全5巻
「4 ミラクル・トランプ・マジック」
p.178

松田道弘氏による解説です。まず、ウォルター・ギブソンの「LIKE SEEKS LIKE」の手順が解説されます。パケットによる赤黒の分離現象として、この作品を原案とする考え方もあります(パケットではなく、デック全体を使った分離現象としては、もっと以前にホフジンサーが考案しているようです)。その後、エドワード・マーローが「OIL AND WALTER」と題して発表した改案は、テンポよくわかりやすい現象に仕立て上げられています。そのため、この作品を原案とする考え方が一般的になり、今では、この系統の作品は「OIL AND WALTER」と呼ばれています。

「OIL AND WALTER」の素晴らしさを表現するために、まずは「LIKE SEEKS LIKE」を解説されているのでしょう。不自然な部分もいくつかあり、正直なところ完成度はあまり高くない印象を受けます。そして、いよいよマーローの作品の解説、、、と行きたいところですが、この本ではマーローの手順を元にした松田氏の改案が解説されています。マーローの手順では、「観客が赤4枚、マジシャンが黒4枚を持って、1枚ずつデーブルに置いていく」とか、「赤4枚をファンに広げたところに、1枚ずつ黒いカードを差し込んでいく」というように、混ざっている状況が非常にわかりやすくなっています。その特長を残し、少しだけハンドリングに工夫を加えたものです。(2019.10.27)

コンビンシング オイル & ウォーター

世界のクロースアップマジック
p.210

ジョン・ラッカーバーマーの改案です。4枚の青裏のカードと4枚の赤裏のカードを使った手順です。観客から見た現象は、裏が青で表が黒の4枚のカードと、裏も表も赤い4枚のカードで起こす奇跡です。まずは青裏の4枚のカードの表面が全て黒いことと、赤裏の4枚の表面が全て赤いことを見せます。青裏の4枚を表向きに広げてテーブルに置き、赤いカードを1枚ずつ差し込み、赤黒交互になるようにします。クリーンに表向きに赤黒交互に並べたパケットをまとめて裏向きにします。しかし、裏向きのままファンにすると青裏4枚と赤裏4枚に分かれています。今度は裏向きのまま青赤交互になるように並べますが、そのパケットをまとめて表向きにして広げると赤と黒の4枚に別れています。

ここまででも充分なオイル・アンド・ウォーター現象ですが、最後にもう一捻り。赤裏の4枚をひっくり返すと黒い表面になっており、青裏の4枚は赤い表面になっています。これだけの現象が、ノーマルカード8枚だけで実現されています。

解説文中に1から6までの図を参照するように書かれていますが、残念ながら図は4枚しか存在しません。原著にはありますので、翻訳版の作成過程で抜け落ちてしまったようです。文章だけでもよく読めば絵が思い浮かぶ程度の場面なのが幸いです。(2022.12.25)

水と油
〜 Oil and Water 〜

カード・マジック宝石箱
p.51

氣賀康夫氏の改案で三段階のルーティーンになっています。難しい技法を使わないことを理想とする著者がたどり着いたひとつの結論ですので、最後まで難しい技法は出てきません。その分、台詞回しに趣向が凝らされていますので、コミュニケーションを楽しみつつ観客側から見やすくなるように配慮しながら演技を進めることができます。黒6枚赤6枚の合計12枚で演じる作品になっており、事前のセットは必要ですが、ノーマルデックで実演できる作品です。

見た目の現象は次のように進みます。まず第一段では、裏向きの黒6枚と赤6枚をテーブルの離れた位置に置きます。それぞれの山から1枚ずつ交互に取ってきてひとつの山になるように重ねていきます。にもかかわらず上下6枚ずつに色が分かれています。つづいて第二段では、第一段と同じことを繰り返し見せますが、その裏で行われていることは違います。違う方法で実現するため、2回見せられたのにタネを追うのは難しくなるという構成になっています。そしてこの二段目に採用されているカードの見せ方が特徴的で、決して難しくないのに非常に説得力のあるクレバーな方法が採られています。最後の第三段では、赤黒交互に混ざっている様子を表向きに確認したにもかかわらず、裏返して少し待つだけで上下6枚ずつに色が分かれてしまいます。

QRコードで著者本人の演技を見ることができますが、残念ながら第二段までの映像のようです。(2023.10.01)

水と油

カズ・カタヤマ マジックの世界
p.94

カズ・カタヤマ氏の改案です。赤いカード3枚と黒いカード3枚の6枚で現象を見せます。赤黒交互の重ねたはずの6枚が赤3枚黒3枚に分かれるという基本的な現象が2回続き、その後逆に黒3枚の上に赤3枚を載せたはずが、一瞬の後に1枚ずつ交互に混ざります。ここで終わってもひとつの作品として成立していますが、さらに2枚増やしてもっと不思議な現象に繋げます。

赤黒交互に混ぜた8枚のカードのうち4枚を左手に持ち、残りをテーブルに残します。それぞれ赤黒交互になった4枚のカードのはずですが、左手の4枚は赤いカードの代わり、テーブルの4枚は黒いカードになります。しかもこの4枚はただの黒いカードではなく、、、オチは書きませんが、非常にインパクトの強いクライマックスを迎えます。

QRコードからご本人による実演が見られます。(2024.02.18)