garamanのマジック研究室

O. Henry Aces

4枚のパケットを4つ作り、それぞれにAが含まれている状況から始まります。そして、[Slow Motion Four Aces] と同じようにひとつのパケットから消えたエースがマスターパケットに移動する現象が繰り返されますが、最後のパケットは観客に手で押さえておいてもらい、その状況からマスターパケットへの移動を試みます。観手は手の下のAが消えないようにしっかりと抑えながら、マジシャンが持つマスターパケットに注目しています。うまく移動していればマスターパケットは4枚ともAに変わっているはずですが、意外なことに4枚ともA以外のカードになっています。その後観客の手の下のカードを確認すると全てがAに変わっているという作品です。観客参加型でインパクトの強い作品でもあり、その傍らで見ているマジック経験者をも欺くサッカー・トリックです。サッカー・トリックの代名詞的な作品でもあります。

タイトルにある O. Henry は、多くの短編を残したアメリカの小説家の名前です。


オー・ヘンリー・フォア・エース
〜 O' Henry Four Aces 〜

カードマジック入門事典
p.305

ロジャー・スミスの名がクレジットされていますが、この名前で最初に作品を発表したのはフランク・ガルシアだとの指摘もあり、正確なところは不明です。少なくともロジャー・スミスもこのテーマにとりつかれた一人であることは間違いありません。

テーブルに4枚のAを裏向きでTフォーメーションに並べます。マスターと、左端のAの上にそれぞれ3枚ずつの他のカードを重ねます。左端のパケットを手に取り1枚ずつ表向きにテーブルに出すと4枚ともA以外のカードになっています。マスターパケットを確認すると、4枚のうち2枚がAになっています。次に中央のAに3枚の他のカードを重ね、同じように1枚ずつ表向きにしていくと4枚ともA以外のカードになっています。再度マスターパケットを確認すると、4枚のうち3枚がAになっています。最後に右端のAの上に3枚の他のカードを重ねますが、今度は移動をより難しくするためにこのパケットを観客に押さえていてもらいます。この状態でマスターパケットを先に確認します。すると、4枚のAが集まっているのかと思いきや、4枚ともA以外のカードに変わっています。予想に反して観客の手の下には4枚のAが集まってしまうという作品です。

マスターパケットにある3枚のAの処理方法が分かりにくい文章になっていますが、「右手の指先でデックを手前に軽く弾くようにしてテーブルを滑らせ、テーブルから落ちる前に左手で受け取るような動き」をイメージすると理解できるかと思います。(2022.01.16)

オー・ヘンリー・エーセス

カードマジック大事典
p.418

ロジャー・スミスの作品が、フランク・ガルシアが「オー・ヘンリー・エーセス」と名付けて有名になったと明記されています。また、その出典として "Slow-Motion Ace Switch-A-Roo" (Revolutionary Card Compositions #One 1971) がクレジットされています。

手順は「カードマジック入門事典」で解説されているものと同じです。写真もイラストも無い1ページほどの解説ですが、こちらの方が分かりやすく簡潔な印象を受けました。また、この本は大事典と謳っているだけあって同じようなテーマの作品がまとめて解説されていますので、周辺知識を得るためにも最適です。(2022.01.23)

スローモーション・スイッチャローの改案

松田道弘のオリジナル・カードマジック
p.202

松田道弘氏の改案です。シックカードを導入して導入部のマスターパケットの扱いがクリーンになっています。また、Tフォーメーションに並べるときの工夫や最後の場面でのバーノン・トランスファーの採用など、いくつかのアイディアが採用されています。Tフォーメーションに並べるときの工夫については「賛同してくれる人は少ないでしょうね」とご自分で書かれていますが、実際ここで躊躇する方は多いと思います。

マスターパケットの状態を見せるときの手つきが1回目と2回目で異なってしまうとか、左手に持っているデックをマスターパケットの右に置くという違和感が気になるなど、一部副作用ともとれる部分もあり、好みの分かれるところだと思います。なお、文末にある参考文献リストには、ロジャー・スミスの原案を始め8つの作品がクレジットされています。(2022.01.30)

オー・ヘンリーのジャズ・エーセス

ミスター・ジェニングス テイク・イット・イージー 2
p.60

ラリー・ジェニングスの改案です。オー・ヘンリーの作品をさらに面白くしたという意図で、英語のタイトルは O. Henry Gets Jazzed となっています。

ノーマル・デックから抜き出した4枚のAと4枚の黒い数札の8枚で行います。通常16枚で行いますが、枚数が少ない分、現象が分かりやすくなっているのが大きな特徴です。Tフォーメーションに並べた4枚のAと、手元に持った4枚の数札の間での移動という印象の作品です。

スペードのAの上に1枚の数札を裏向きに乗せます。残りの3枚の数札のパケットにハートのAを裏向きに乗せます。この2枚が入れ替わります。同じようにテーブルのAの元に2枚・3枚とAが集まっていきますが、4枚が揃うかと思った瞬間、テーブルの4枚は全てが黒い数札になり、マジシャンのての中に4枚のAが揃います。(2026.03.01)

O.J.エーセス

ミスター・ジェニングス テイク・イット・イージー 2
p.70

ラリー・ジェニングスの改案です。タイトルの O.J. は「Oh, Jennings」を指しているようです。どうやら、この作品が出版される前に見たことがある人の誰かが、そんなことをすっかり忘れてもう一度驚いた、その時に発せられた一言が名前になったようです。

オー・ヘンリーのジャズ・エーセス」と同じように、全部で8枚しか使いません。ノーマルデックから取り出した4枚のAと4枚の黒い数札という組み合わせも同じです。同じ条件でスタートして、最後のオチも同じです。違いは途中のアプローチだけ。特定の現象を実現するための解決策を考えるのは労力を要するものですが、同じ条件のもとで何パターンもの解決策を生み出すのは、呆れるほど感心します。

演じる側の視点で言えばさらに少し演じやすくなっているように感じます。また観客側の視点でも現象が少しシンプルに感じるようになっていると思います。(2026.03.07)