garamanのマジック研究室

Five Card Mental Force

5枚のカードがテーブルに並べられています。あなたは、その中から自由に1枚を選びますが、声にも出さず、指をさすこともなく、ただ心に決めるだけです。

にも関わらず、マジシャンはそれをずばり当てて見せます。

ダイ・バーノンの名作のひとつです。


ファイヴ・カード・メンタル・フォース
〜 Five Card Mental Force 〜

カードマジック入門事典
p.174

ダイ・バーノンの手順がそのまま解説されています。(セリフ回しは違う気がしますが...)

手順自体は恐ろしく簡単で、数行の解説で充分です。ただ、それだけで実演する勇気は出てこないでしょう。色々と説明を補足した結果、余計なセリフが入ってしまっているような印象です。メンタル・フォースですので、観客の心理を誘導する必要がありますが、言葉で直接誘導するような解説になってしまっているため、むしろ心理的には外れる確率が高まる気がします。セリフの部分は「相手に意識して欲しいこと」だと思って解説文を読むのが良いと思います。その上で、そこに意識が及ぶように、セリフ以外の方法で間接的に誘導するのが得策です。(2023.01.08)

5枚のカードのメンタル・フォース
〜 Five Card Mental Force 〜

カードマジック大事典
p.566

「20ドルのマニュスクリプト」に掲載されているダイ・バーノンの手順が解説されています。

1ページにまとめられたシンプルな解説です。心理的な原理を活用しているため、特に操作が必要ない作品です。そのためか、原理についての解説をするべきところを、マジシャンのセリフとして掲載されているので、逆に成功率を下げてしまわないか心配になる手順です。バーノン自身は筆不精でしたので、おそらくバーノンの演技を元にフォーセット・ロスが文章にまとめたものと思われますが、その際にメンタル・フォースの力を信用しきれずに、ついセリフとして紹介してしまったのではないかと推測します。そのため、解説通りのセリフで実演したことのある人は、意外と成功率が低いと感じているのではないかと思います。(2023.01.15)

The Five-Card Mental Force

ヴァーノン・リベレーションズ 7&8巻 日本語字幕版
Chapter5

ダイ・バーノン自身により、この作品の原理が解説されています。映像の冒頭ではまずゲイリー・オーレットが実演します。この時の演技は「20ドルのマニュスクリプト」で公開されている手順のようです。そのため、使用する5枚のカードもセリフ回しも、一般的に知られているものです。

この映像は、マイケル・アマー、ゲイリー・オーレット、スティーブ・フリーマンの3人が、バーノンを囲んでインタビュー形式で色々と話を聞くと言うスタイルで進みますので、ゲイリー・オーレットの実演の後は、バーノンの話が続きます。解説の合間に興味深いエピソードがいくつか語られるのも、今となっては貴重な映像です。作品自体の解説としては「20ドルのマニュスクリプト」に書かれた解説と違う点が大きく2つあります。1つ目は「ダイヤのエースではなくスペードのエースを使うこと」。2つ目は「目立つカードについてセリフで伝えるのではなく、観客自身に考えさせること」。このためにバーノンは実際にお金やお酒をかけた勝負として行っていたそうです。わざとらしく誘導したような印象を残さない実用的な演じ方だと思います。

また、これまでに発表されていた手順では「ダイヤの9は選ばれない」とだけ書かれていて、詳しい理由は書かれていないため、実演するには不安が残るところがありました。しかし、この映像ではバーノン自身によって、その理由が詳細に語られています。解説を聞けば、ダイヤの9こそこの作品を生み出すきっかけであったことがわかります。(2023.01.22)